2008年01月31日
ヴィノグラード調査委員会、最終報告書を提出
2008年1月30日(水)20時のニュース
ヴィノグラード調査委員会が最終報告書を公開し、「イスラエルはレバノンで勝利を収めなかった」と決定した。同報告書は(戦争終了際に行われた)地上戦について、「結果を得られなかった」と指摘し、「戦争の運営や戦場における実行には欠陥があった」と言明。また、「国防軍は過失を犯し、目の前の挑戦に対応することが出来なかった」と強調し、「ヒズボラによる北部へのロケット攻撃に対する効率の良い対応を執行できなかった」と付け加えた。
委員会メンバーらは「政治指導者らによる地上戦の決断は必然だった」と強調した。「代償も多く、達成できたものも少ないが、決断自体に過失は無かった」と言明。同メンバーらは「政治的な考察があったとしても(※注1)、首相や国防相は、イスラエルへの利益を考え、地上戦を承諾した」とした。
しかし一方で、「政治指導者らは、地上戦の動向を管理しなかった」と非難。また、「国防軍内でも、国連安保理決議後の休戦に関する十分な協議が無かった」と批判した。
報告書は「政治部門においても、軍事部門においても、司令部の決定には過失や欠陥があった」と言明した。また、「軍の最高司令部、特に陸軍において、重大な欠陥が見られた」と指摘。更に「戦争への準備、戦闘部隊への指令やその実行においても欠陥があった」と強調。「戦争は戦略的考察や計画における欠陥を明らかにした」と指摘し、「後方の防衛においても重大な過失が見られた」とした。
ヴィノグラード調査委員会は、兵士拉致後にあった代わりの選択肢に対する協議が無かったことを非難した。同調査委員会は「イスラエルはどの選択肢がより良いか検討する前に戦争を開始した」と強調。また、「軍事作戦の開始決定から終結後までも、指導部は地上戦を実行すべきか避けるべきかを決めかね、決断力を欠いた。同件に関する行き届いた協議が行われることは無かった」と言明。「地上戦に関する決断の遅れは、柔軟性を縮めた」と付け加えた。
調査委員会は「これらの戦争運営における過失に対する責任は、政治指導者と軍事指導者にある」と強調した。
エフード・バラク国防相は「報告書を読み、数日中に対応する」と発言した。
イスラエル軍「ヴィノグラード調査委員会の報告書は重要と考える」と述べ、「内容を熟読し、問題点の改善に努める」と言明した。同軍の報道官は「軍は報告書を待たずに、戦争終結とともに調査を開始し、多数の教訓を得た」と指摘。また、「作戦実行、指令や計画に関する見解は必要に応じて最新化した」と強調。「軍は軍需品、武器や臨時貯蔵の補足に務め、5カ年計画を打ち出した」と付け加えた。
アシュケナズィ参謀総長は、報告書の結論を検討し、解決案を提示する特別委員を設置した。
ヒズボラはヴィノグラード調査委員会の最終報告書に対し、「報告書は、ヒズボラが自身の戦略をシオニストに押し付け、思惑通りに行動させたことをイスラエルが認めた現われ」と述べた。ヒズボラ所属のムハマド・ハイダル議員はアルマナールの「報告書はヒズボラが達成したもの」と強調した。
リクードは「ヴィノグラード報告書は厳しく、オルメルト首相は辞任すべきだ」と非難した。また、同党は声明で、バラク国防相に公約どおり内閣から離脱するよう呼びかけた。
カディーマのエリ・アフラロ与党党首は「首相の人格破壊を試みる、ビンヤミン・ネタニヤフ党首をはじめとする野党党員の無責任な試みは、今日終結した」と批判した。同党首は「ネタニヤフと寝ぼけた野党党委員らは今夜謝罪すべきだ」と強調した。
メレツ・ヤハッド党のヨースィー・ベイリン党首は「ヴィノグラード最終報告書は、イスラエルの未来にとって重大な決断が、考察無しに、今後の影響も考慮せず下されたという見解を深める」と牽制した。
オルメルト首相とアシュケナズィ参謀総長はアミール・ペレツ議員(※注2)に電話し、「これまでペレツに対する対応は不当だったが、最終報告書はこれらの不当に対する修繕」と語った。ペレツ前国防相は明日記者会見を開き、ヴィノグラード調査委員会最終報告書に触れる。同議員の側近は「報告書は、ペレツがイスラエルの安全保障を考え、ふさわしい行動を見せ、責任感と一貫性と判断した」と強調。「多くの者がペレツに謝罪すべきだ」と言明した。
労働党主要関係者は「報告書には政治的震動は無く、主要問題に焦点をあてた、中立で妥当な報告書だ」とした。
第2次レバノン戦争で戦死したヤニーブ・シェインブルームの母親であり、テルアビブの国防相の自宅前で行われているデモに参加しているミルタ氏は「ヴィノグラード報告書には失望した」と述べた。同氏は同報告書を「オルメルト首相に合格点を与え、問題点の責任はすべて、戦争後教訓を得た軍にあるとした、中身の無い報告書」と非難した。
【解説】
(※注1) 「政治的な考察があったとしても」 右派などは、戦争終結直前に行われ、多くの死者を出した地上戦は、オルメルトが自分の政治人生や保身を考え決断したものとして非難している。
(※注2) アミール・ペレツ 戦争中の国防相および労働党党首。社会福祉などを掲げ選挙に挑んだペレツが選んだ閣僚ポストは国防相。軍に関する何の経験も無く、下に国防のプロを置かなかった。「ペレツの無知が多くの死者を出した」という考えは国民の中でも多い。
戦争の指導者を痛烈に批判した中間報告書から9ヶ月、ついにヴィノグラード調査委員会の最終報告書が提出された。第2次レバノン戦争の失態とそれに伴う政府批判を受け、オルメルト首相が設けた調査委員会。最終報告書は厳しいものの、中間報告書ほどの厳しさやインパクトは無く、どちらかというと戦時の軍の行動に焦点をあてた。
オルメルト首相の今後に関する提案は無い。首相は今回、戦争開始の決断における甘さ、戦争中の決断プロセスや後方の防衛についてなどの批判を受けた。戦争開始については、「戦争開始の決断は不当ではなかったが、軽率だった」とした。しかし、責任の多くは軍にあるとした点や、多くの死者を出した戦争終結直後の地上戦への決断は「必然だった」としている点などから、オルメルトは批判が比較的少なかったことに満足しているらしい。
軍は一番の非難を受け、準備、見解、作戦の実行、後方の安全保障などほぼすべての面において問題があったとされた。軍は独自の調査委員会を設け、問題点の改善などに努めている。
ここで注目されるのが、バラク国防相の行動。ヴィノグラード報告書の提出とともに選挙に向けた行動を開始することを公約しているバラクだが、現時点での辞任は避けたいところ。その点を踏まえて、可能性のある展開を見てみると…
① オルメルト首相が自発的に辞任 一応存在するが、ほぼありえない可能性
② カディーマ党員らがオルメルト首相を党首の座からおろす ①よりは可能性は高い。この場合、首相の座に着く可能性が最も高いのはリブニー外相。しかし、カディーマ党員らも現時点では混乱を避けたいと見られるので、現状での可能性は低い。
③ 労働党が内閣から離脱 この場合、即座に早期選挙につながる。先日も述べているように、現時点では選挙を避けた政治家のほうが多いので、可能性は高くない。
④ 労働党は内閣にとどまるが、早期選挙に突入 この場合、早期選挙はカディーマと合意の元で行われるため、「早期」といってもすぐに行われるわけでもない。オルメルトは当面現職にとどまり、バラクは公約どおり早期選挙にもって行く。右派も結果的に内閣を倒せる。皆、なんとなく面子も保てるので、まあまあありえる可能性。
⑤ 政局に変化無し 労働党は離脱せず、内閣は現状を維持。オルメルト首相も現職にとどまる。中間報告書の荒波を乗り越えたように、今回も何とか落ち着く。現状では、高い確率でありえる可能性。
ということで、④と⑤が今のところ一番可能性が高い。
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投稿者 moshe : 2008年01月31日 06:11
コメント
Moshe様、今晩は。
なるほど!最終報告はオルメルトにとって甘い内容との見方がありましたが、どうやらそのようですね。政局の流動化だけは避けたいというのが大勢のようですね。前回の中間報告の際にも、リクード以外は、「とにかく解散だけはやめてくれ」というのが本音だったようですしね。私も⑤が一番可能性としては高いだろうと思いますね、ただ、今後政局が動くターニングポイントとしては、和平協議の中でエルサレムに言及、若しくは、シロやテコアといった歴史的・宗教的背景の色濃い中小規模の入植地解体に着手、ホメッシュの再建運動強制排除、などを大義にシャスが倒閣に動く、モファズ氏などが復党に動き解散への流れになる、個人的にはこのように見ていますがさてどうなりますか・・・・。それから、次期総選挙の際に、リクードとベイテヌの統一会派構想がまことしやかに囁かれていますが、Moshe様はどのように思われますか?!
投稿者 一刀両断 : 2008年01月31日 22:00
昨日22ちゃんのニュースで見ました。
やっと、やっとの報告書ですよね。
きっと政局はなにも変わらないと思います・・・
関係ないですけどお母さんはもうブログやめてしまわれたのですかね?
投稿者 めぐみ : 2008年02月01日 03:09
>一刀両断様
シャスは宗教省も復活させ、やっておきたい事は既にやり遂げたと言えますね。時期を計らって内閣離脱に向け動く可能性は十分あると思います。そもそもイスラエルの内閣は任期を全うできない方が普通なので、シャスでなくても、誰かが任期終了前に早期選挙を仕掛けてくるでしょう。
また、次期選挙には、一刀両断様の仰るとおり、カディーマ議員がリクードや労働党に復党すると思われます。モファズはカディーマに移籍した際に風見鶏ぶりを見せたうえ、交通相に終わってしまっていますが、次期内閣でどうなるか興味があります(交通相としては交通事撲滅キャンペーンをガンガンとやり、そう悪くなかった印象があります)。リクードも人材不足なので、小さいにしろ、何らかの閣僚ポストに就くような気がします。
リクードとベイテイヌの合併は確かに噂されていますね(現時点では否定していますが)。ベイテイヌにとっては、議席数を増やし、政治的な力を得る大きなチャンスでしょう。
ただ、ベイテイヌは極右の党なので、何もかもリーベルマンが決定し、他の議員はそれに従うといった雰囲気があります。リクードも合併すれば議席数を増やせるでしょうが、宗教右派フェイガリンが党首選で23%獲得した際に「極右傾化」が指摘されたリクードにとって(そこまで右に寄ったとは思いませんが)、現時点でベイテイヌと合併することにどれだけのメリットがあるか分かりません。
>めぐみ様
はじめまして。母のブログですが、しばらくコンピューターの調子が悪く、更新できずにいるようです。ようやく少し動き始めたようで、更新の可能性も出てきたようです。
投稿者 Moshe : 2008年02月01日 09:47