2007年08月06日
イスラエルとホロコースト生存者
2007年8月5日(日)14時のニュース
シモン・ペレス大統領は「ホロコースト生存者の手当て問題を丁重に解決する必要がある」と述べた。同大統領は「政府は真剣に取り組んでいると信じている」と発言した。
リクードのビンヤミン・ネタニヤフ党首は、今日中に手当ての問題を解決するよう政府に呼びかけた。同党首は「我が国の経済状況は、必要としている者への援助を可能にしている」と強調。また「ホロコースト生存者の高齢者は国から、尊厳を保って生きていくためのサポートを得るに相応しい」とした。
「ホロコースト生存者の会」のコレト・アビタル会長は、生存者の数を拡張しようとする財務省の公務員に惑わされないよう呼びかけた。同会長は「貧困層にいる8万人の生存者、特に高齢者に対し、即時手当てを与える必要がある」と強調した。
2007年8月5日(日)19時のニュース
エルサレム首相府前で行われた抗議行進が終了した。「命の行進」と呼ばれた行進には、ホロコースト生存者、ボーイスカウトのメンバー、学生や社会活動家を含む数千人が参加した。行進の参加者は「ホロコースト生存者の厳しい経済状況に対する政府の無視」に対して抗議し、「手当てに83シェケルのみ加えることは、貧困者を馬鹿にすることだ」と指摘した。
【解説】
「命の行進」=通常「命の行進」は毎年行われる高校生らによるポーランド訪問のことをさす。これは、ナチスがユダヤ人を移送するときに非人道的な条件下で歩かせていたのが「師の行進」と呼ばれているため。
イスラエルでは今年あたりから、ホロコースト生存者に対する国の対応が問題になっています。それはホロコースト記念日で紹介されたことで、貧困層のホロコースト生存者がスポットライトを浴びたためでしょう。イスラエルでホロコースト生存者に与えられる手当てはドイツよりはるかに少ない訳です。
イスラエルはこれまで、ホロコーストで亡くなったユダヤ人の記録に全力をかけてきました。しかし、問題になっているのは、生存者のために国は十分な努力をしたかということです。生き残った生存者がどのような思いでイスラエルに来て、イスラエルに来た当時どのような思い出生活していたかはあまり目を向けられませんでした。
そもそも、建国当時のイスラエルで、ホロコースト生存者は白い目までは行かなくとも、偏見で見られていたそうです。それは、当時の国民がまだホロコーストとは何だったのか、何故何もしない人間が、抵抗も無いまま殺されていくのかが理解できなかったからでしょう。また、「運命に立ち向かうユダヤ人」を旗印に建国したイスラエルでは、ホロコースト生存者を「運命をそのまま受け入れた」、「抵抗も無いまま死へと導かれていった」として捉えられてしまったそうです。
ホロコーストに対するイスラエルの対応が変わったのは60年代。この次期二つの大きな事件が起きました。それは「アイヒマン裁判」と「六日戦争」です。アイヒマン裁判の重要性は、イスラエル内部でもホロコーストが大きな脚光を浴び、生存者が自ら経験を語れる場が出来たということです。「六日戦争」の重要性は、六日戦争前、多くの敵を前になすすべなく殺されるかもしれないことを経験したイスラエル人は、ホロコーストのユダヤ人の気持ちを少し理解できたということです。
さて、ホロコースト生存者の中には経済的に厳しい生活を送っている人たちがいます。自らを「ユダヤ人の国」を称するイスラエルは、ユダヤ人として迫害を受け、イスラエルに逃げてきた人間をサポートする義務があることになります。現在イスラエルには25万人のホロコースト生存者が住んでいます。内16万人は「ホロコースト手当て」と呼ばれる手当てを受けていません。
1953年以前にイスラエルに移民した生存者の4万3千人は、月1,0400シェケルの手当てを受けています。ドイツからの移民2万人は、ドイツから428ユーロ(2,530シェケル)の手当てを受けています。ドイツ統一以降にホロコースト生存者として認められた2万3500人は、ドイツから270ユーロ(1,600シェケル)を受けています。
旧ソ連から移民した16万人は「ホロコースト生存者」として認められず、手当てを受けていません。その内、貧困層の6万人は年金などから月2,200シェケルのみ受けています。
この事態を受け政府が出した案は、全く手当てを受けていない生存者の内6万人には月80~100シェケルの手当てを与え、月600シェルまでの収入がある生存者6万人も80~100シェケルを与えるというものです。これに対し、ホロコースト生存者は「少なすぎる」と激怒し、今回の行進にいたった訳です。
(ホロコースト生存者への手当てに関する参考はイェディオット・アハロノットより)
投稿者 moshe : 2007年08月06日 05:22
コメント
追記:
イスラエルにおける50年代60年代頃のホロコースト生存者の生活に興味がある方は、映画The New Land(エレツ・ハダシャ、1994年)と映画Letters to America(ミフタビーム・レアメリカ、2006年)をお勧めします。映画館ではもうやっていませんが、レンタルビデオ屋などで探せばあるでしょう。
前作はイスラエルに来て難民キャンプですごした二人の兄妹の話。兄は過去を捨てイスラエル人になろうとしながら、妹は母親の記憶を大事にしようしながら、それぞれ新しい生活を始めます。
Letters to Americaはホロコースト生存者の両親を持つ少年ヒリックの物語。両親には、ヒリックの知らない、ホロコーストで死亡した息子がいました。ある日、ケネディ大統領の顧問に、死んだ息子と同姓同名の人物が選ばれたという記事を読んだ父は、息子が生きていると信じ込み、顧問に向けて手紙を出し続けます。見かねたヒリックが、顧問の名前で父親に手紙を出すと、父はアメリカに会いに行くと言い出し…
投稿者 Moshe : 2007年08月06日 07:32
初コメントです
ブログ読ませていただきました。
海外での生活が伝わってきて面白かったです。
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投稿者 Matsui : 2007年09月07日 16:50