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2007年07月24日

「ナクバ」か「独立戦争」か?

イスラエル教育省が承認した新しい3年生用の地理教科書が波紋を呼んでいる。ユリ・タミール教育相は22日(日)、イスラエルの独立戦争をアラブ側の視点から描いた教科書を承認したと発表。教科書はアラブ系の小学校で使用される予定だ。

イスラエルの独立戦争は、アラブ側では「ナクバ(大惨事)」と呼ばれ、パレスチナ人が追放され、土地を奪われ、難民になったことが強調されていまする。教科書はこの戦争を「戦争の後、ユダヤ人がアラブ人に勝利し、イスラエルと近隣諸国との間に休戦協定が結ばれました。アラブ人はこの戦争をナクバ(つまり大惨事や大損害)と呼び、ユダヤ人は独立戦争と呼びます」などと説明している。

一方、教科書は、「イスラエルとアラブ諸国との戦争は、イスラエルが分割案を承認したにも拘らず、アラブ側がそれを否認したため勃発した」として、ユダヤ・アラブ双方の意見を挙げる試みを見せている。

タミール教育相は決定を「独立戦争は大惨事だったとする、多くのアラブ系市民の認識も提示する必要がある」と説明した。また「この教科書は、アラブ系の子供たちも読めるような、バランスのとれた記述を提示している」と指摘。「アラブ系の子供たちが、イスラエルが建国したとき、全員が心から喜んだとする記述に共感できるとは考えにくい」と強調した。

イスラエル・ベイテイヌのリーベルマン党首は決定に対し、「左派はいつも相手側を正当化しようとする」と述べた。また、リブナット前教育相は「イスラエルに追放されたと教えられた子供たちは、イスラエルに対し武力で抵抗すべきだと考える恐れがある。新しい教科書は、自らの手で国内に裏切り者を育てることになる」と非難。国家宗教党のズブルン・オルレブ議員は「教育相は、ユダヤ人の歴史を取り消す反シオニストの教科書を承認した」と批判した。

アラブ系議員らは基本的に決定を賞賛したが、ラアム・タアル党のアハメド・ティービー議員は「アラブ側の物語をユダヤ系の学校のカリキュラムにも取り入れるべきだ。ユダヤ人の学生も真実に触れる権利がある」と強調した。



教科書に関するタミール教育相の決定が波紋を呼びのはこれが初めてではない。2006年12月には、同教育相がイスラエルで発行される教科書に載っている地図にグリーンラインが描かれるていることを確認するよう要請し、「グリーラインを描くことは政治的だ」と右派などから批判を浴びた。これに対し同教育相は「グリーンラインを描かないことも政治的な決定であり、政治に触れずに地図を載せることは出来ない」と反論している。

参考:
タミール教育相:独立戦争の代わりにナクバ(ヘブライ語)
http://news.walla.co.il/?w=/94/1140985

ナクバがイスラエルの教科書に(ヘブライ語)
http://www.ynet.co.il/articles/0,7340,L-3428171,00.html

1948を「ナクバ」とする教科書を教育相が承認(英語)
http://www.haaretz.com/hasen/spages/884769.html



このような話から浮かび上がってくるのは、アラブ系市民の複雑な教育事情だと思います。ということで、今回は知る限りのアラブ系市民の教育事情を書いてみたいと思います。

イスラエル義務教育法(1953年)
イスラエル国における教育は、イスラエル文化の価値観と
科学的偉業、愛国心、国とイスラエル民族への忠誠心、
農業や産業、開拓への訓練と、自由、平等、寛容性、
協力に基づいた社会を目指す大志を基盤とすべし


*経済的事情
まず、アラブの地方行政は、国からでる資金が少ないばかりか、市民から取れる税金が少ないという現状におかれています(土地の資産価値が低いことや、産業地区が少ないことが原因)。地方行政の予算が少ないと、教育の予算も少なくなります。学校を建てたり、クラスを増やしたりすることが難しくなり、授業数も減ります。ユダヤ人の町と比べて貧しいアラブの町の学校は、予算を国からの援助に頼らざるを得なくなってしまうわけです。授業数が少なくなると、ユダヤ系の学校に比べて不利になってしまいます。

ラビン政府(92〜95年)は教育5カ年計画を打ち出し、教育制度、特にアラブの教育の改善を目指しました。その結果、授業数などに見られる、アラブ教育制度とユダヤ教育制度の差は縮みました。しかし、96年以降、アラブの教育に宛てられる予算は、また減っています。

*カリキュラム
次に重要なのは、イスラエルが「ユダヤ人の国」であるということです。学校で習う、歴史、ヘブライ語、文学、聖書などは、本当はユダヤ人の物語です。ユダヤ人が「自分たちの物語」を習うのに対し、アラブ人はこれらを「他人の話」として勉強することになります。しかし、イスラエルで生活するうえで、ヘブライ語は重要で、他の科目も大学に入学する上で必要になったりします。

もう一つのポイントは、学校によっても違いますが、アラブ人はこれらの授業にプラスアルファ、アラビア語、アラブ文学、宗教(イスラム或いはキリスト教)など、自分たちの文化を勉強することになります。ユダヤ人も大体中学2年生までアラビア語を習ったりしますが、それ以降は必修科目ではなくなってしまいます。

ということは、アラブ系の学生は、少ない授業数の間に、より多くの科目を勉強することになります。

*人口問題
もう一つの問題は、人口問題です。アラブ系市民の人口は年々すごい勢いで増えています。子供の人口が増えるということは、教育と大きく関わっています。それは、子供の数が増えるにつれて、予算も増やしていかなくてはならないからです。現状維持だけでも大変なアラブ系の学校は、さらなる生徒数の拡大への対処を迫られています。


ーーー


上記の問題に加え、48年にアラブ系インテリ層の大半がいなくなってしまったことなど、色々な問題があります(キリスト教教会系の学校に通っている子は、かなりハイレベルな授業を受けているようですが、学校によっては授業が英語のところもあり、アラビア語で読み書きが出来ない子もいるとか…)。このようなことから、アラブ系の学生の進学率は、どうしてもユダヤ人(特にアシュケナズィー)の学生と比べ少なくなってしまう訳です。経済事情や社会事情が厳しい中、大学に向けた授業をしながら、独自の文化を継承することは、難しいという話。

投稿者 moshe : 2007年07月24日 09:51

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コメント

教科書はどこの国でも問題が起こっているのかな。
やはり教育問題は難しいですね。

投稿者 naratake : 2007年07月24日 18:50

>naratakeさん

ひさしぶり。
文系の教科書はアイデンティティーの元になるので、どの国も譲れないものがあるんですよね。特に学校で習う「歴史」は、「事実」というよりも「物語」なので、論争が起こってしまうわけです。

投稿者 Moshe : 2007年07月26日 16:58

こんにちは。たまたま拝見しました。

ニューズウイーク誌は、ナクバに関する修正の決定は2002年でリブナット前教育相の時代だそうです。リブナットさんは何で今頃否定的なことを言うのでしょうか?
不思議です。

投稿者 喜代巳 : 2007年08月21日 22:03

こんにちは。たまたま拝見しました。

ニューズウイーク誌は、ナクバに関する修正の決定は2002年でリブナット前教育相の時代だそうです。リブナットさんは何で今頃否定的なことを言うのでしょうか?
不思議です。

投稿者 喜代巳 : 2007年08月21日 22:04

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