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2006年03月07日

〜映画『ミュンヘン』に対するイスラエルの対応〜 最終回

「良い者」と「悪い者」
「『良い者』と『悪い者』の区別をぼかし過ぎだ」という批判があります。なかには「区別をぼかし過ぎた為、続きの作品でアブネルがブラックセプテンバーに入っても不思議でない」と皮肉っているものもあります。

スピルバーグは何を描きたかったのでしょうか?インタビューに対し彼はこういっています。「我々(映画の製作者達)の原点は、『皆人間だ』という事だ。相手が何故そのような行動をしたのか理解しなくてはならない。理解するという事は許すという事ではない。しかし、思考を止める事が何に繋がるというのだろうか?」

また、「『ミュンヘン』は対話を信じて作った。これは、私が私の両親とラバイから教わった事だ。これはユダヤ的なものである。(祈りのひとつの)『聞けイスラエルよ!』は『聞け』という言葉で始まる。つまり、まず相手の事を聞き、それから次の質問をするということだ」

悩む主人公
実際に作戦に参加した諜報部員は「皆作戦を信じ、誰も悩まなかった」と言っています。人を殺す時、どんなに正当な理由があるにしても、それについて何も感じられずにいるか?それは分かりません。

主人公アブネルの葛藤につき、スピルバーグはこう言っています。「良心の呵責は、アブネルが払う代償だ。彼は自分のした事から精神的に崩壊していく。ゴルダ(・メイール首相)には他に選択肢が無かった。私もこのような作戦に反対しない。イスラエルは攻撃しなくてはならなかった。しかし、作戦を任される者は苦しむのだ。モサドの諜報部員は007ではない」


最後のシーン
最後のシーン、ニューヨークに移住したアブネルが上司と別れた後、ツインタワーが画面の真ん中に出て、“THE END”の文字が出てきます。このシーンに対し「このシーンは、イスラエル・パレスチナの紛争が911に繋がった。つまり、911はイスラエルのせいだというものだ」との批判がありました。

スピルバーグはこう言っています。「あのシーンで私は、残念ながら、アメリカも長年イスラエルが直面している、厳しい選択をしなくてはならなくなった事を言いたかった」。また「テロがこのように拡大している世界で、世界がイスラエルから学べるものは大きい。テロと対抗するという事は、両方とも悪い選択肢のどちらかを選ばなくてはならないという事だ」と語っています。

また911後のアメリカについてこう語っています。「911以降、アメリカでは外交に対する軽蔑がある。力が全ての問題への唯一の解決法だと考えられている。私が心配だったのは、911への対策として、武力による報復以外に考えられなかった事だ… 私はアメリカやイスラエルがこの武器を使用してはならないとは言わない。しかし、いつも話し相手がいるかを検討しながら行動しなくてはならない」

この映画はイスラエル人にとっては、鑑賞し難い映画です。それは、身近にある現実を、スクリーンの中で改めて観なくてはならないからです。イスラエル人にしてみれば「報復によって状況は改善しないとしても、他の選択肢を提案してくれよ」という気持ちになると思います。これが、イスラエルではなく、アメリカに向けられた映画なら納得も出来るかもしれません。


祖国とは何か?
この映画のもうひとつのテーマは「祖国」だと思います。作品中、フランスマフィアのメンバー・ルイは言います「家とは高くつくものさ」。またPLOメンバーのアリーはこう言っています「祖国が一番重要なものだ」。主人公の母は「私達には行く場所が無かったが、(イスラエルが建国された)今はある」。(うろ覚えですが、こんな感じだったと思います)


これは、スピルバーグが、ユダヤ人の気持ち、また紛争の特殊さを上手く描いていると思います。ホロコーストを経験し国を作ったユダヤ人にとっては「もう二度と抵抗無しに殺されない」という考えが原点にあります。これは作品中にも出てきた「我々が自分のことを守らなかったら、誰も守ってくれない」という考えにつながります。過激になるとスティーブ(でしたっけ?)のように「俺が気にするのはユダヤ人の血だけだ」という考えになってしまいます。これを上手く表現していると思います。

しかし、アリーに代表されるパレスチナ人の気持ちもあるが故に、紛争は簡単に終らないのです。それはユダヤ人が住みたい『家』が他の民族のものでもあるからです。この映画はどちらが正しいかという為の映画ではないと思います。さきほども書きましたが「受け入れるかは別として、双方の気持ちを聞こう」ということをスピルバーグは描きたかったのでしょう。


ミュンヘン・1ミュンヘン・2>ミュンヘン・3

投稿者 moshe : 2006年03月07日 16:53

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